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俊頼口伝集

恋せんとなれるみかはのやつはしのくもでにものおおもふころかな もろともにゆかぬみかはのやつはしおこひしとのみやおもひわたらん これおもかれおもよそへてくもでといふも、くものてのやつあればなんと申なんめり、されどこのやつはしおたづぬれば、川などにわたしたるはしなどにあらず、あしおぎ生たるうきの道のあしければ、たヾ板おさだめたる事なく、所々にわたしたるなり、それがあまた所にわたしたれば、八つはしといひならはしたるなり、ものヽかずはかならず八つとしもなけれども、いひよきにつけてやつとはいふにや、くもでといふは、はしの下によはくてよろぼひたはれもするとて、はしらおたよりにして、木おすぢかへてうちたるおいふなり、それははしにのみうつものにはあらず、たなヽどのあしのゆはくてたわれぬべきにもうつめれば、くもでといふ物はさだめなし、かのやつはしにくもでうつべしとも見えねども、はしいふにひかされてよめるにや、ふるき歌にはさやうにこそはよめれ、又いたおさだめもなくおきちらしたるさまの、くもでに似たればよそえてよめるにや、