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丙辰紀行
八橋 三河国八橋は杜若の名所なる事、在五中将〈◯在原業平〉の歌にてかくれなし、今岡崎より池鯉鮒にいたる道より北の方一里ばかりに、それなんむかしの八橋なりとて、所の人はるかに指おさしておしへ侍る、久敷田となりて今は杜若なし、三四年前余〈◯林道春〉が作りける詩にも、古人遺跡鉄鑢歩、隻有三河杜若名となん、 六々歌中第幾仙、風流千歳慕幽玄、世間一瞬陳跡、杜若為薪沢作田、