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大猶公御上洛中の詠歌
四日〈◯寛永十一年七月〉おか崎出御有、やはぎ過させ給ひ、ちかきほとりに八橋となんいひて、雲手に渡せる橋の名所ありと聞えしお尋させ給ひ、今は跡ばかりにて、その沢に杜若のみありと聞しめして、 八橋やむかしにおもひ出されて残せるさはのかきつばたかな ◯按ずるに、此歌、徳川氏御実紀附録に引く所の上洛記には、八橋やはしはむかしに成ぬれど残るは沢のかきつばた哉とあり、