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所歴日記

昔は沼なりつるに依て、浅き処に橋柱お立てヽ、深みお避けて浅きにうつりて掛たる橋なれば、八つ曲りたるになむ有ける、されば八橋と雲伝へたると語る、橋辺に由ある墓あり、其上に古びたる石塔あり、此塚の主は業平なり、過にし比大納言光広卿、四方しらじ苔の下には唐衣著つヽ馴にし跡幕ふとはとよみて手向け玉ふと話る、予が雲、在五中将は援にて身まかりたる人にあらず、いかでしるしの塚のあるべきやと問へば、さればにや偽墓といふと答ふ、