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平家物語

墨股合戦の事 同じき十日、〈◯養和元年三月〉の日、美濃の国の目代早馬お以て都へ申しけるは、源氏既に尾張国まで攻め上り、道おふさいで人お一向通さぬよし申したりければ、平家やがて討手おさし向けらる、〈◯中略〉十郎蔵人行家は引き退き、三河の国に打ち越えて、矢矧川の橋お引き、掻楯かいて待ちかけたり、平家やがて、続いて攻め給へば、そこおも遂に攻め落されぬ、〈◯下略〉