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李花集
延元四年の春頃、遠江国井伊城に住侍りしに、浜名の橋かすみわたりて、橋本の松ばら湊の波かけて、はる〴〵と見渡さるヽあした夕べのけしき、面白く覚侍りしかば、 夕暮は湊もそことしらすげの入海かけて霞む松原 はる〴〵と朝みつ夕のみなと船こぎ出るかたは猶霞つヽ