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江戸名所図会

日本橋(にほんばし) 南北へ架す、長凡二十八間、南の橋詰西の方に御高札お建らる、欄檻葱宝珠の銘に、万治元年戊戌九月造立と鐫す、此橋お日本橋といふは、旭日東海お出るお親見る故に、しか号るといへり、〈事跡合考に雲、日本橋のかゝりしは慶長十七年の後歟とありて、其考へお記せり、されど北条五代記、永楽銭制禁の事お記せし条下に、慶長十一午のとし極月八日、武州江戸日本橋に高札お建るとある時は、慶長十七年より以前なりとしるべし、〉此地は江戸の中央にして、諸方への行程も此所より定めしむ、橋上の往来は、貴となく、賤となく、絡謝として間断なし、又橋下お漕つたふ魚船の出入旦より暮に至る迄嗷々として囂し、