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事蹟合考

新大橋永代橋之事 元禄十一年中、永代橋かけらるヽ、この時老中阿部豊後守正武、河村瑞軒に申さるヽは、ありがたき御仁政にてはなきか、万民通路のため公儀御失却火敷おも御厭ひなく、大橋二箇所までかけられ候、何と大水の時分などいたみはあるまじきやと被申時、瑞軒答へ候は、されば大水の時は川上田地四万石ばかりは極ていたみ申べしと答へしが、果して宝永元年利根川筋洪水のみぎり、葛西の猿け俣等あふれて、千寿葛西領かけて、この川に四万石余皆無したりし也、