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東遊記

九十九橋 辺国山中に懸渡せる所の小橋には、朝六つの橋、かつら橋など奇妙の橋少からず、朝六つの橋は、飛騨の国の山中にかけ渡せる石橋にて、いかなる暗夜といへども、其橋の上に至れば少し明らかになりて、人顔も朧に見え、たとへば朝六つ比のあかりのごとし、故に土俗むかしより朝六つの橋と名付くとかや、物知れる人のいひしは、此橋の下には名玉あるゆえなるべしと、誠にさもありぬべく覚ゆ、