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東遊記

九十九橋(つくもばし) 越前国福井の町の真中に大なる川流る、此川にかけ渡せる橋おつくも橋といふ、九十九橋と書り、其大さ三条の橋程もありて、半までは石橋なり、石橋の大なるもの天下是に勝るものなし、半より木の橋なり、是は常なみの橋なり、石と木お続合せたる橋は珍敷橋也、いかなる故と尋るに、皆石橋となす時は大洪水の時、全体ともに崩れて、其再興大かたならず、半お木の橋にせる事は、大洪水の時、木の所ばかり落て、水淀まざるゆえに石の所は恙なくして、橋の全体損ずることなし、故に跡の造作必易しと也、大なる橋は何方の橋もかくなしたきもの也、橋の普請の時も石の所は千歳不朽なれば、隻木の所半分の手間にて済事なれば、別而心やすかるべし、