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源氏物語湖月抄
五十四夢浮橋
終巻お夢浮橋と号す、此巻の別名のみにあらず、一部の総名なるべし、〈◯中略〉案之、真実之義は夢の一字の外は別の心なし、浮橋は夢にひかれて出来たる詞也、〈◯中略〉されば本歌の、世の中は夢のわたりのうきはしかうちわたしつヽ物おこそおもへ、といへるも、うき橋に別の儀なし、定家卿の、春の夜の夢のうき橋とだえしての歌もおなじ心也、