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古事記伝
十八
渡(わたり)とは、海にまれ川にまれ、渡行処(わたりゆくところ)お雲、〈後世の歌などに、難波わたりといふとは異なり、〉万葉一〈二十六丁〉に、対馬(つしま)乃渡々中爾(のわたりわたなかに)雲々、六〈四十五丁〉に泉川渡乎遠見(いづみがはわたりおとほみ)雲々、此外も多し、凡て某(そこ)渡と雲は、皆此意なり、景行紀に、柏済、吉備穴済、向津野大済、名籠屋大済見え、又川には、仁徳紀に考羅済などあり、又難波之大済とも此記に見ゆ、〈高津宮段〉何れも海路に就ていふ名なり、