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古事記伝
三十三
和多理是邇(わたりぜに)は渡瀬(わたりぜ)になり、河にて彼方へ渡る処お雲、万葉十二〈三十二丁〉に、倭路(やまとぢの)、度瀬別(わたりぜごとに)、十七〈四十九丁〉に、波比都奇能(はひつきの)、可波能和多理瀬(かはのわたりぜ)などあり、渡る瀬ともよめり、〈わたると雲は用言なるお、わたり瀬と雲ば体言なり、〉是(ぜ)、書紀には涅(で)とあり、〈涅は、万葉に、走出(わしりで)の堤、出立(いでたち)の清きなぎさ、などある、出の意なるべし、契冲、渡出(わたりで)とは岸際お雲べしと雲り、〉