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十訓抄

俊頼朝臣語雲、白川院、淀に御方違の行幸ありけるに、五月ばかりの事にや有けん、女房殿上人の舟あまた有けるに、暁に成ほどに、向かたに郭公一こえほのかに鳴てすぐ、俊頼一首詠ぜまほしくおぼえしに、女房の舟中に忍びたるこえにて、淀の渡のまだよぶかきにとながめられたりし、時に望てめでたかりき、人々感歎していまにわすれず、あたらしくよみたらんには、まされりとなんいはれける、