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西行物語

天王寺へまうでけるに、道にていと雨ふりければ、江口の君がもとに宿おかれ共、ききいれぬさまにて、さやうの人おば、こヽにはとヾめずと申ければ、西行かくぞ書付て出ける、 世の中おいとふまでこそかたからめかりのやどりおおしむ君かな、遊君ども是お見て、よび返して返事、 世おいとふ人としきけばかりの宿にこヽろとむなとおもふばかりぞ