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海道記
七日、〈◯貞応二年四月〉市腋お立て、津島の渡と雲所お舟にて下れば、蘆の若葉あおみわたりて、つながぬ駒も立はなれず、菱の浮葉に浪はかくれども、難面かはづは、さはぐけもなし、とりこすさほの雫、袖にかヽりたれば、 さして物おおもふとなしにみなれざほみなれぬ浪に袖はぬらしつ、渡はつれば、おはりの国にうつりぬ、