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扶桑拾葉集
二十八
あづまの道の記 藤原光広 白洲加に至る、是は白菅お俗にしらすかと雲なるべし、一里ばかり行て海少入たり、〈◯中略〉是より浜名へは四里ばかりとなん、今ぎれの左にあたりて、北にみゆる山のあなたなりといふ、此渡りは百年ばかり以前、地震の時より家など塩にひかれて、かくかはれりといへり、日よく晴ぬれば、水底に屋形のかたちみゆといへり、此程一里船にて渡る、あら井の南外の海なり、詠めやれば天と海とひとしく見わたされて、波の立あがるは、白雲の風に飛て忽消かへるににたり、まへ坂にあがりて、蛤など蘆火にててうぜさせつヽ、かはらけとるもいそがはし、