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東行別記
荒井舟中 あら井より小船に帆おあげ舞坂へわたる、なみのうへ一里にはたらず、むかしは此所陸地にして、南に慌々たる海涛有、北に漣々たる湖水有、遠江といへるは、此湖によりての名なり、ちかき代いつの頃にか有けん、颶風高く起て、此道おおしきり、南海北湖一片の潮となる、これによりて、今ぎれのわたり(○○○○○○○)といふとなん、人のかたるお聞て、東海桑田の事などおもひあはせ、古今の世変おかんず、感極りて別に天遊の境にいる、 揚帆荒井船、飛過海中天、心裏観風月、自疑遺世仙、