[p.0438]
太平記

俊基朝臣再関東下向の事 旅館の灯幽にして、鶏鳴暁お催せば、匹馬風に嘶て、天竜川お打渡、小夜の中山越行けば、白雲路お埋来て、そことも知らぬ夕暮に、家郷の天お望ても、昔西行法師が、命也けりと詠つヽ、二度越し跡までも、浦山敷ぞ思はれける、