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宗長手記
明る夏五月〈◯永正十三年〉下旬、かの城〈◯遠江国源岳城〉にうちむかはる、〈◯今川氏親〉折節洪水〈◯天竜川〉大海のごとし、舟橋おかけ舟数三百余艘、竹の大縄十重廿重、隻陸地ににたり、此橋の祝として千句あり、発句、 水無月はかち人ならぬ瀬々もなし、今おもへば、みなかち人のわたりかなと申べかりけり、敵川のむかひにうちいで、射矢雨のごとし、数万の軍兵、やす〳〵とうちわたす、敵はすなはち引入ぬ、