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人見雑記
世のかはり行くさまおかし、光広卿の記に、大井川おかちにて渡て見んとてわたる、大なる石限りなく流れて、足の踏どころなし、河越しといふもの、つかずしては、一歩も成がたしと書けり、今の公家衆、かヽる文かく人あるべからず、徒歩する衆はあるまじ、古は気体ともに柔弱ならず、容体ぶりなき事知るべし、此頃武家には徒渡り多かるべし、当時は徒渡の人、万石以上にて絶てなかるべし、紀州公、今も徒渡りし玉ふお、至て粉らしき事にいふなり、