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丙辰紀行
富士川 我国に名お得たる大河はあまたあれど、ことに富士川は海道第一の急流なり、舟に乗て渡るに、わたし守ちからおいだして、竿おさし櫓おおしいだすとき、岸より見るものは、あはやとあやうくおもひ、船中の人は、目まひ魂の消るこヽちぞしける、 往来停馬此踟躊、天下滔々凱独吾、河畔為通名利路、涪陵慚愧一樵夫、