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夫木和歌抄
二十六渡
喜多院入道二品親王家五十首〈すだの渡下総〉 正三位季経卿 はる〴〵とすだのかはらおあさゆけばかすめるほどや渡なるらん 永久四年八月雲居寺歌合霧 源兼経朝臣 夕霧にすだのわたりはみえねどもふな人よばふ声きこゆなり 此判者基俊雲、左歌すがたはあしうも侍らぬに、すだのわたりとよみたるぞなさけなき心ちするにや、これは業平朝臣のいざこととはんとよみて、かれこれかれいひになみだおとす所なり、すみだ川の程におりいてとぞかけるよし、それに思ひそめて覚るにやあらんと雲々、