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なぐさめ草
墨股河は、美濃尾張の境とかや、岸に打望たれば、船はむかひにあるほどにて、時うつるまで誘ひいぬ、とばかりありて、里の子せりかなにか、かたみにつみもちたる三四人、おきなの老かヾまりたるなどぞ乗ぐして来る、童部の船よりおりかね侍るお、こにや、むまごにや、たすけおろしなどして、我もいみじうくるしげなるも、何となく哀にぞ見侍りし、水鳥どもの河洲にむらがりいたる、いとおもしろし、 船人も猶子お思ふ水鳥のすのまた川は波こヽろせよ