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袖中抄
十九
みおづくし 君こふる涙のとこにみちぬればみおつくしとぞわれは成ぬる 顕昭雲、みおづくしとは、河口などに、水のふかき所おば湊といふ、或は濈ともかけり、そのみおのしるしにたつる木お雲也、世俗には、みおじるしといふお、和歌にはみおづくしとよむ也、又水脈舟とかきては、みおひきの舟とよめり、又万葉雲、水隻衝石(みおつくし)こヽろつくして思かもこのまももとな夢にしみゆる、私雲、このまはこぬまとよめる、又土佐日記雲、みおづくしのほどよりいでヽ、なにはづきにつきて、河尻にいるといへり、国史には、難波津に始立澪標之由あり、其年可考、〈◯中略〉 つの国に、みおづくしおもたてられ、又みおづくしと雲所もあれば、外にはよまん、はヾからしきに、万葉雲、 とおたあふみいなさほそ江のみおづくしあれおたのめてあさまし物お 又つの国にとりても、ほかによめり、相模歌、 住よしのほそ江にさせるみおづくしふかきにまけぬ人にあらじな 河によめる歌 河波もうしおもかヽるみおづくしよるかたもなき恋もするかな 能因歌枕雲、みおづくしとは、水のふかき所にたつる木おいふ也、