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廻国雑記
安房国、〈◯中略〉那古の観音にまうで、ぬかづきおはりて、夕の海づらおながめやるに、寺僧のいで来て、あれ見給へ、入日おあらふ沖津白浪とよめるは、此景也といへり、されどそれは、津の国住吉郡なごの浦およめるとかや、そのなごの浦に、難波津おまもれる人の住しによりて、其浦お津守の浦といひ、又其子孫の氏によびて、津守氏有とかや、今はなごの浦の所に、さだかにしれる人なしとなむ、