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倭訓栞
前編二阿
あの〈◯中略〉 万葉集にくさかげの安努とかけるも、あのとよめり、延暦儀式帳に草蔭の安濃と書り、伊勢の安濃郡おいへり、〈◯中略〉安乃津市は、安東郡専当沙汰文に見えたり、〈◯中略〉あのヽつお武備志に洞津と書せるは、あなのつの義、な、のは同音也、よて又伊勢穴津とも書せり、織田信包、あのヽ津の城主たりし時、穴津少将と呼し事、太閤記に見えたれば、武備志も我邦の人のいひしによる成べし、されど草かげの枕詞によれば、青野の義なるべし、草の蔭(かげ)野などいふがごとし、