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筑前国続風土記
二十一志摩郡
引津〈津の字すむべし〉 引津は、芥屋村より六七町西南に当り、芥屋と岐志との間に在し入海なり、むかしはこの入海に芥屋岐志両方より潮相通じて、大船も内海に入しといひ伝ふ、いつの時よりか入海はあせて、みな田となり、今は田地凡五六十町も有とかや、〈◯中略〉この田地、むかし入海なりしゆえに、今も田の底おほれば、貝のから出づと雲、〈◯中略〉かやうに四方に陸地めぐりて、その中に入海ある所は、諸州に希なる奇境なり、引津と名附けしは、岐志芥屋両方に潮引し故にや、また船入て潮干ぬれば、外海へ出がたかりしお船お、引出したるゆえに、名づけしにや、