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高倉院厳島御幸記
むまのとき〈◯治承四年三月二十二日〉かたぶきし程に、むろのとまり(○○○○○○)につき給、山まはりて、そのなかに、いけなどのやうにぞみゆる、ふねどもおほくつきたる、そのむかひに、いえじまといふとまりあり、つくしへときこゆる舟どもは、かぜにしたがひて、あれにつくよし申、むろのとまりに、御所つくりたり、御舟よせておりさせ給、御ゆなどめして、このとまりのあそびものども、ふるきつかのきつねの、ゆふぐれにばけたらんやうに、我も〳〵と御所ちかくさしよす、もてなす人もなければまかり出ぬ、