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横浜開港見聞誌

四方の波しづかにして、士農工商万歳おしゆくして、民のかまどは烟り高く立登り、南は長崎、北は蝦夷、唐太、千島に至るまで、人心異る事なく、然もつよし、是お異州へも聞へありて、我日本の勢能おしたひ来る、亜墨利加国一将ぺるりといふ者の願ひに御免ありて、江府の南海中、横浜てふ所に新に港御開ありて、中央に運上所お建玉ひ、西の方に我国の商家おつらね、これお本町と雲、東の方につヾきて異人商館お立させ玉ひ、万里の波上お越へ、積来る産物お又我国の産に交易のにぎはひ、銀銭の売上げ、数百万の商ひ、おのづから民の幸、民のよろこびとは成ぬべし、〈◯下略〉