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東遊記後編

新潟 越後国新潟は、信濃川其外の川に落合て海に入る所なり、海口近くの一二里の所は、川幅広き事一里二里ばかり、渺々として湖の如く入り海の如し、岸より岸まで水甚深く浅瀬といふものなし、千石二千石の大船といへどもいづくまでも自由に出入りす、誠に川湊にては日本第一ともいふべし、〈◯中略〉四面打開きたる地にて、北海の廻船出入の大湊なれば、越後第一の繁華の地にて、青楼多くしてにぎやかに、又越後一国の米不残此湊に出るゆえ、諸大名蔵多く建つ、隻北方雪国の事ゆえ、冬に成ぬれば河水氷閉て、舟の通行絶へ、陸地も雪深く、海上は十月より三四月頃までは、廻船も出る事あたはざれば、夏一季住べき国といふべし、