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太平記

先帝船上臨幸事 主上船底より御出有て、膚の御護より仏舎利お一粒取出させ給て、御畳紙に乗せて、波の上にぞ浮られける、竜神此に納受やしたりけん、海上俄に風替りて、御座船おば東へ吹送り、追手の船おば西へ吹きもどす、さてこそ主上は虎口の難お御遁有て、御船は時の間に伯耆の国名和湊に著にけり、