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長崎港草

長崎輿地 長崎は西海道肥前国彼杵郡の属邑なり、其地東は抵佐嘉郡廿四里、南海上野母に至て七里、西は松浦郡五島に到て四十八里、北は藤津郡大村に抵て拾里、至太宰府五十里、到京畿二百拾里、到江府三百三十二里、 形勝 四面は皆山にして、襟に滄海お帯び、東は控温泉、西は松浦括り、左は睨天草、右は接葛城、畳障重巒朶々として環共し、崇岡峻嶺蝘蜓の伏たる如く、烟雲竹樹上下交〻映ず、風帆月浦変態無窮なり、秀麗明鮮なる甲於天下、鎮台其中間、上縮下縵、宛鶴翼冲天の勢の如し、其地磽確不平、重阻嶮絶にして群山これが郭郛となり、長江これが溝池となる、まことに九州の喉お扼ゆるの区にして、富饒の地也、