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長崎港草

紅毛来長崎 黒船御禁止となりて、此津の民世渡りすべき生業なきことお憐み玉ひ、多年平戸へ来りし紅毛商舶、此港に至らしむべき旨、江府よりの命ありて、寛永十八年巳の年より、長崎の港へ入来れる事となりぬ、元より町家の住居は猥はしければ、蛮夷の為に建置たる出島の空たるに籠め置れける、夫より以来渡海毎年絶ることなし、さて又平戸へ紅毛の来れる始は、慶長十三年にて、寛永十八年まで凡三十余年の間なりし、〈◯下略〉