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麑藩名勝考

唐湊〈即坊津、方角集、◯中略〉 凡港口の広三町四十間余、直に西に向ひ、東に入て、更に南に曲り、下浜深浦の曲に至り、凡十有二町、其中に突出する岩お鶴觜と雲、大坊より港中に出る事二町余、森々たる樹間に朱の玉墻あり、素揃烏尊お祀て、祇園宮と称す、此港の山形鶴の翔るに依希するおもて、舞鶴の浦とも、嘴の浦とも雲、因て其長く南出るもの即鶴崎とは称る也、又鶴嘴の東湾は下浜、南湾おば大坊と雲、凡港中海の深さ四十有余尋より三十六尋に至る、故に口狭くして入遠く、底深して中広し、回岸連り抱き唯西一方お欠く耳大瀛に接すといへども、別に一の瀦海となる、〈◯下略〉