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地理纂考
十四給黎
山川港 山川鳴川の両村に宣れり、天然の海湾にして、其周廻凡一里、港口東に射し、闊凡八町、港底深数十尋なり、港の形状瓢に似たり、港の口瓢の頭にて、港内は其腹の如し、又鶴の両翼お伸たる形ちに似たりとて、里人は鶴の港とも称へり、此湊に泊繫する大小船、如何なる大風といへども更に難ある事なし、殊に薩摩大隅二国の間の海水、南より北に入る事数十里の裏海なるに、此湊其海口にありて、舟船の出入停泊便りよし、故に琉球諸島、及四方に往来する大船巨舶、風候お待の所とす、固より当県の舟舶は言も更なり、四方の商船賈舶常に輻湊するお以て当所は艚戸豪賈多くして、人烟繁茂せり、且支那及朝鮮等の漂船近地に来著せし時は、此湊に引入れ、後長崎に護送す、此地海門の藩籬なるが故に、往古島津久豊命じて、城下より鎌田清隻児玉某お此地に移し、非常に備へしといふ、