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北海道志
二図説
渡島国、〈◯中略〉蓋聞く、此地松前(○○)、江差(○○)、函館お三港と称す(○○○○○○○○)、而て松前は昔時の首府にして人烟稠密、西十八里に江差あり、地狭く俗朴なり、民吏お懼れ敢て法お犯さず、山に盗賊なく、市に乞丐なし、倉庫お山に造り、監守お置かず、其風俗の美、松前地方の及ぶ能はざる所なりと、唯其風気日に開るに至て、其俗或は古謂ふ所の如くならざるお知んや、松前の東二十五里に函館あり、山囲み水深く、泊船風波の患なし、此三港や、三陸、二羽、加賀、能登、越後、佐渡、大坂、肥前等海舶輻湊、大賈富商有無交通、各北地の一都会とす、故に其民多く奢侈お好み遊宴に耽り、小利お規せず、生計に疎なりと、此其習慣然らしむる所なり、幕府再び奉行お箱館に置くに及てや、五稜郭お建て、砲台お築き、守備お厳にし、開港互市の所と為す、今や欧米諸洲の船舶日夜入口、貨物麕至し、〈◯中略〉其繁盛独三港の第一に居るのみならず、我邦の都会亦指お此に屈すべし、