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源平盛衰記
二十三
平氏清見関下事 平家は東路に日数お経つヽ、路次の兵召具して五万余騎にて、駿河国清見が関(○○○○)まで攻下れり、旅の空の習は、哀お催事多けれ共、此関ことに面白し、実に伝聞しよりも猶興お催す、南と西とお見渡せば、天と海と一にて、高低眼お迷はせり、東と北とに行向ば、磯と山と境て、嶮難足おつまだてたり、岩根に寄る白浪は、時さだめなき花なれや、尾上に渡る青嵐も、折しりがほにいと冷、汀に遊鴎鳥群居て水に戯れ、叢に住虫の音とり〴〵心お痛しむ、