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信長記

関役所停止之事 角て勢州平均に打したがへ給ひしかば、且政道可取行とて、宗徒の人々お召集めて仰せけるは、当国関役所悉く可停止と思ふはいかに、往還の費のみならず、殊更参宮の輩も過半せり、万人お安んずる事は、国家お保つ者の楽とする所也、〈◯中略〉是お伝聞人々、いかさま天下お能治めん人は、一定信長殿にておはすべしと咡かぬ者もなかりけり、〈◯中略〉十一月〈◯永禄十二年〉十日、千種越に懸り急がせ給ふ程に、翌日上京有て、今度於勢州凶徒等悉攻亡し、万民撫育の功お立、諸関令停止、往還の累無き様に致沙汰つる趣、被申上ければ、義昭公不斜御感有て、国光の御脇指まいらせ給ひけり、