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時秋物語
相模のくに足柄山にきにけり、こヽにてよしみつ馬おひかへていはく、とヾめ申せどももちひたまはで、これまでともなひたまへる事、そのこヽろざしふかし、さりながらこのやまのせき、たやすくとほす事もあらじ、よしみつは所職お三拝申て、みやこおいでしより、命おなきものになしてまかりむかへば、いかなるせきにてもはヾかるまじかけやぶりてとほるべし、それにはそのやうなし、是よりかへりたまへといふお、時秋なほうけひかず、またいふ事もなし、〈◯下略〉