[p.0715]
閑田耕筆

万葉集に、おほなむちすくな彦名の作けん静の巌屋は見れどあかぬかも、とあるしづのいはや、いづかたともしられず、抄物にもいはれず、あるひは播磨の石の宝殿おそれなりといふは、非なること論なし、然るに近年小篠道沖といふ人、石見国浜田侯の臣にて、京師逗留の日話せられし趣お伝きくに、其国邑知郡に静窟(しづのいはや)といふもの有りゆえに其郷お岩屋村と号す、鏡岩といふものヽ下に小社ありて、静権現と称す、〈◯下略〉 ◯按ずるに、石宝殿の事は、尚ほ神祇部社祠篇に在り、宜しく参看すべし、