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八雲御抄
五名所
山 かみやま〈山城 賀茂 山下水 ならのは 郭公 自中古或加其字 範兼説在賀茂、うしろに有とも、是同事也、〉 おぐら山〈同 月 雪 霧 鹿 紅葉 大井川 詠花例亭子院歌合に有之不難〉 とは山〈同松〉 〈しらとりのとは山〉 さぎさか〈同 白つヽじほそひれのさぎさか 白鳥のさきさか〉 こはだ〈同かち人馬山しろのこはだ〉 かせの〈同おとめこか、うみおくかせ、鶯 いづみかは近〉 ふたいの〈同一目代 不替〉 まくひ〈同春草おまくひかりのつかひ〉 みむろど〈同 又みんまと見円なり〉 さがらか〈同件短歌有憚〉 かすが〈大和 雲 霞 日 鹿 紅葉 鶯 雪 松 藤 すがのね〉 はるび〈同 春日也 或はるべとよめり、よぶこどり、〉 見かさの〈同、かさの山とも、ふるさとのみかさの鳥、日月 時雨 花 おほきみのみかさ〉 さほの〈同霞 卯花 郭公 喚子鳥 紅葉 かり さヽ竹の大宮人〉 みわ〈同 神 すぎ まそゆふみしめゆふ 雲 霞 花〉 たつた〈同 霞 雲 花 紅葉 鶯 ゆふつけ 鳥 大とものみつの泊近〉 なら〈同松 紅葉 雪 このてかしは あおによしなら日本紀曰、兵草木お踏ならしける故、ならといふ、〉 まつち〈同 馬 花 郭公 あさもよぎ 又有東国駿河又有紀伊国にも同山歟、真土とかけり若同山歟、〉 かみなび〈同〉 みむろ〈同 いはこすげ 紅葉 花 神がきのみむろ たまくしげみむろ あちさけみむろ〉 かみへの〈同 並上山〉 みかきの〈同 並上なら〉 かつらき〈同 雪 雲 花 紅葉 月 石橋有 あおやぎのかつらきしもとゆふかつらき〉 ふたがみ〈同 並上山 くしか みのふたがみ近加川内国也〉 たかまど〈同 雨 桜 紅葉 春日のちかしますらおのたかまど〉 たかまつの〈高松野 雪 霜〉 いこま〈同 雪 雲 月 雨 ひぐらし 河内国近歟 霜 両国名所歟 おほえのきしより、くもいにみゆる、〉 くらはし〈同 或むかはしとも 椋橋とかけりはしだてのくらはし 月 雲 郭公〉 たむけ〈同 ゆふだヽみたむけ ゆふだすきたむけ 紅葉 抑坂上郎女奉拝賀茂社時、使超相坂山見近江海、仍近江之由、見範兼抄、〉 さき山〈同 春日より見〉 はつせ〈同 始瀬おはつせともよめり あまお舟、はつせの山といへり、 とませの山ともいへり 桜 花 月 雪 霞 村 かくらくのはつせ あまお舟はつせ〉 まきもく〈同 霞 ひはらの山 うらかておまきもくみつもつのそまやま〉 あなし〈同 丹生河上なり 山かづら 雲 雨 つばきさけれやまきもくのみとよめり〉 あなしの神座之仍花か雲かとみゆる、ゆふしでといふなり、〉 にぶの〈同〉 こせ〈同 つら〳〵 つばき〉 よしの〈同 三吉野 花 雲 霧 月 雪 松 滝 いはのかけみちといへり みよしののまきたつ山といへるもよしの也〉 みふねの〈同 吉野也 雲 よぶこどりみよしのヽ滝のうへのみふねの〉 みづわけ〈同 みよしのヽみづわけ 月神さぶる 石ねこりしく〉 たかきの〈同〉 あおがき〈同 吉野也〉 きさのなか〈同 きさの山とも 吉野也 よぶこどり 松 きさは、ちかき山ともいふ也 みよしのヽちかき雲心也、きさは非名所、〉 みヽかの〈同 吉野也〉 たか〈同いでくる水又在常陸〉 みヽなし〈同已上 二山相向 口無〉 そでふる〈同 或実名歟 吉野也一説在対馬〉 ふるの〈同 松 杉むら桜、いそのかみふるの〉 たむの〈同 細川也〉 おほの〈同〉 よらの〈同 或よこの山共〉 うちま〈同 あさかぜさむし〉 いかひ〈同 ふないりのいかひ 鹿〉 いはむら〈同 白砂にかヽれる雲すみさふるいはむら〉 みなぶち〈同巌〉 〈なんぶちとも ますかヾみみなぶち〉 ほそかは〈同 並上山 みなぶちのほそかは まゆみ〉 かみおか〈同 有憚〉 したひ〈同〉 あおすげ〈同〉 あおかく〈同〉 みつ〈同 已上三山従明日香 遷叢原郷時〉 むら〈同 或隻多の山歟〉 かみのかこ〈同〉 あまのかご〈同 かご山とも ひさかたのあまのかご 衣ほす わすれ草 霞 雲 みねのまさかき 俊成歌、神鏡奉鋳所也、あまの石戸おしひらき給所也、天のかご山は、あまりにたかくてそらのかのくるによりていふ歟、日本紀に見えたり、〉 ひきての〈同ふすまぢおひきての〉 こま〈同 狛山に鳴霍公鳥 泉河渡雲遠見こゝにかよはすと雲〉 きなれの〈同鳥〉 くさか〈摂津 なにはおすぎて〉 しま〈同 あへのしま山 同事歟〉 なつき〈同 いなの近つのヽ松原〉 ありま〈同 有温泉 万三郎女 短歌には 大和歟 霧 しながどり いなのさヽはら〉 井な〈同 国房いなのは山とよめり 下水 しなが鳥〉 みくに〈こずえにすまふむさヽび〉 さへき〈同 万七五月山或さつき山とも 卯花〉 しまくま〈同 たまか づら〉 あこし〈伊勢 さてのさき〉 かくれの〈同 おのへのかくれの〉 いさみの〈同 やまとの見えぬといへり〉 あさか〈尾張 或伊勢国 又在陸奥 陸奥は安積山也 紅葉〉 もる〈遠 又在上野歟紅葉 時雨 露〉 まつち〈駿 ゆふこえて、いほざきのすみだがはらにといへり〉 ふじの〈同 紅葉禰雲 基俊難顕輔がふじのたかねに雪きえて歌也 相模ふじのねに、かヽるしらくもとあり、総非難ふじのしば山とも 霞 雪 煙〉 しはお〈同 或しはおともあらくまのすむ〉 あしがら〈相万 満誓之 造筑紫観世音寺時歌也 鳥総たつすき杣山也 若 在筑紫歟、可尋、〉 はこねの〈同 並上山 あしがらのはこねの栗まくと雲り〉 かまくら〈同 たきヾこる〉 あきなの〈同 あしかりのあきなの ひこぶねの〉 わおかけ〈同あしかりのわおかけ〉 みかほし〈常 筑波山お雲也〉 つくは〈同 橘の下ふく風 つくはねともいふ かしまなると雲り〉 あしほ〈同 つくはねのそかひにみゆる〉 あふさか〈近しの〉〈すヽき さねかづら いはし水〉 たながみ〈同 ゆふだヽみさねかづら〉 たかしま〈同 鹿〉 ひら〈同 紅葉 小松 ひらのたかね兼盛〉 かヾみ〈紅葉 花 霧〉 とこの〈同 いさや河 いぬかみのとこの〉 しらつき〈同 ゆふだヽみはなかづら〉 なみくら〈同 さヽなみの 雲いてはあめふる〉 うねびの〈同〉 なほり〈同 万いはふみならし入後〉 こしのおほ山〈同 後書入〉 おほ〈同〉 いかご〈同 のべのはぎいはねふみ〉 あさづま〈同 あさこえて 霞 あすこん〉 おきつしま〈同 近江海の〉 おも〈美の 霞、泊近也、〉 ふは〈同 或大和国とも〉 にひた〈美のおにひた山同事也 在同国おにひたのふか山といへり しらとほのおにひたやま〉 あそ〈上野 かみつけのあそあそ山つヾら〉 うすひの〈同日くれてみゆ〉 もる〈同並上山清輔抄近江にもあり〉 くろかみ〈下野 むはたまのくろかみ露 雨 山すげ〉 みるもの〈同しもつけのみるもの〉 みちのく〈陸 こがね花さくあづまなる〉 ふかつしま かな〈同 金山は多あき山とよめりしたびか下になくとり〉 あさか〈同 俊頼はあさくはといへるに、病ならしゆへ濁てあさか山といふべしと、俊成は不可然也、かげさへみゆる山のいは、このあさか山也、にごりていふべき也、〉 のちせの〈若 わかさぢののちせの〉 あおばの〈水鳥あおばの又在尾張国丹波境歟、可尋、清輔抄在陸奥同名山歟、〉 しほつ〈越前馬〉 あらち〈同 やたののあさぢ 雪、岑、〉 しら〈同こしのおほ山ともいふ、在清輔抄こしのしらねとも、雲たかくふすま〉 となみ〈加〉 のとのしま〈能 とぶさたて、舟木きる山なり〉 ふたがみ〈越中 しふたにのわしのすむ、わしの子うむと雲り、たまくしげ 鳥 郭公〉 すかの〈同 ゆるう事 なく〉 たち〈同 雪 はひつきの江近〉 おほえの〈丹波 たまくら 丹波ぢの〉 たかつの〈石 或たかみとも 石見なるたかつの〉 かも〈同 いはね〉 うつたの〈同 石見なるうつたの 石見の海うつたの山と雲〉 わたりの〈同〉 やがみの〈同〉 あお〈幡〉 たゆらぎ〈同桜〉 なよ〈同 或寺お山とも石ふみならす〉 いくち〈同有憚〉 いはくに〈周 周防なるあかし其道といへり〉 かしと〈紀〉 きりめ〈同 霞〉 いとかの〈同 あじろき すき 桜よぶこどり 紅葉 麻蒔〉 おほは〈同 丹波にもあり霞〉 いもせ〈同 せの山は同事也、又いもとせの山といへり、後撰にも妹によせたり、せの山にたヾに、むかへるいもの山といへり、別山歟可尋 吉野川中におつ 紅葉 雲 松 秋霧〉 なぐさ〈同〉 ひとくに〈同 木のは あきつのヽ かきつばた〉 おすての〈同 あしたゆくまきのは〉 たまつしま〈同〉 あはの〈阿 まゆのこと雲いにみゆる〉 なこしの〈大 桜喚子鳥〉 さみの〈讃〉 さぬ〈同〉 しかの〈筑前 あらおらかよすがの山〉 かやの〈同 鹿〉〈草枕 かやのうへといへり〉 おほきの〈同 郭公 紅葉〉 かヾみ〈豊前 あづさゆみひく とよ国〉 ゆふ〈同 はなちのかみおゆふ山とよ国のゆふ 雲〉 くたみ〈同 ゆふいる雲〉 あら〈同〉 しはつ〈同 或しつは山とも〉 まつら〈肥前 異名雲 万ひれふる山〉 あさぢ〈対 もも舟の紅葉〉 うつかた〈同 たかしきのうつかた紅葉のやしほのいろ〉 のどか〈万十一〉 かの〈同〉 うえかた〈同〉 みる しけ〈谷に山ふき有 越中歟家持在越中時歌也〉 いつへの〈越中歟〉 しま〈一説伊与国歟〉 いそべの〈万十一〉 やのヽかみ〈露 霜、万十、つまかくす〉 あしくま〈摂歟 万十四、ゆづるは、かぜふるす〉 あかみ〈万十四、くさねかり、〉 こもち〈万十四〉 いかづち〈万三〉 き〈在大宰府〉 ゆふま〈遊布麻とも万十二十四〉 うらのヽ〈万十四〉 わづかそま〈或わづか山とも、若大和歟、家持短歌万三〉 このもと〈万十四〉 しほひの〈有憚 万十六〉 いはき〈万十二〉 あしき〈万十二〉 うち〈土佐歟、石上乙配〉 いほへ〈筑紫歟 或隻山お雲歟〉 かりの〈かりがね 紅葉〉 このきの〈万五〉 よこの〈万十四あづさゆみよこの〉 さき〈万十 春日近なり〉 おとこ〈山 八幡始古今道〉 ふか草〈同古今 勝延様々〉 かさどり〈同 古今 忠岑 元方 すみがまよめりと、在清輔抄、六帖、山しなのかさどり山といへり、〉 うち〈同古喜撰〉 おとは〈同 やましなの 古 友則 貫之〉 くらぶ〈同古敏行是則〉 ときは〈同 古 淑望〉 かめ〈同古惟岳〉 おしほ〈同 大原野也古 業平 松〉 まつのお〈同 後撰〉 くらま〈同 撰 中興女〉 はヽそ〈同 撰〉 はな〈同 拾 遍昭〉 たかおの〈同 拾 八条左大臣あたごの山〉 あたご〈同 清輔抄 堀河院しきみがはら〉 あはた〈同〉 いはくら〈同 拾有憚〉 あらしの〈同 拾 公任〉 とりべ〈同 拾有憚〉 おほはら〈同 後拾元輔式部〉 おの〈同 後拾 すみがま 相模〉 いなり〈同 後 恵慶 すぎ神社なり〉 あさひ〈同 宇治也新古 公実〉 ふしみ〈同 新古俊成〉 いはせ〈大和 後伊勢歌〉 たかまの〈同 古歌〉 はつかの〈摂 匡房〉 みやぢ〈尾 後撰〉 すヾか〈伊勢 後撰〉 しほの〈甲 さしでのいそちどり〉 かみぢ〈伊勢西行〉 ふたむら〈参河 遍尾張山也 後撰政慶 関 から衣〉 さやの中〈遠 古友則〉 うつの〈駿 新業平〉 ながら〈近 後撰〉 おほくら〈同 後撰師尹公〉 みおのなか〈同 拾 高島のみおの中山〉 たまのお〈同 拾 かまふのヽたまのお〉 かれいひ〈同金〉 いたくら〈同 詞顕輔〉 みかみの〈同 拾〉 しかの〈同 千載 近隆公行〉 いし〈同 長能〉 もる〈同 資業〉 たかのお〈同新 匡房〉 きませの〈同 拾 清正娘 ひえの山也ひえの山おば、我山ともいふ、〉 いなばの〈美の 因幡之由、見清輔抄、松 古 行平〉 ふなぎの〈同 後拾通俊〉 みのヽお〈同 新古伊勢歌ひとつ松〉 くら井〈飛 いやたかの岑、六位笏木伐之山也、拾 能宣 通信の国山歟〉 おばすて〈信 古今 月 おばすてざりけるさきは、かぶり山といふ也、在俊頼抄、〉 あさまの〈同 古今中作〉 さらしなの〈同 月 貫之拾〉 かざこしの〈同〉 ふたこ〈下野後撰〉 あひつの〈陸 後撰滋幹女〉 すえのまつ〈同 古今 興風松山とも 波こゆる〉 しのぶ〈同伊勢物語〉 かへる〈越前 古今 兼輔 躬恒 雪〉 神なび〈丹波 千載義忠〉 ちとせ〈同 拾 清輔抄在出羽同名所也、〉 たかた〈石拾〉 くめのさら〈美作 古今〉 きびの中〈備中 古今 備後境 有細谷川まかねふくは鉄おわかす山也、たゞきびの山とも〉 いやたか〈同拾兼盛〉 たかくら〈同 詞家経〉 なかたの〈同 千載為政〉 みかみの〈紀伊 拾あふみにも有〉 たかのヽ〈同千寂蓮〉 みくまのヽ〈同 新古今〉 あはぢ島〈淡俊忠〉 いるさの〈但 後撰〉 ひぐらしの〈筑紫歟後撰〉 まちかね〈摂 詞肥後〉 いはや〈千経衡〉 いはでの〈千顕輔〉 みくら〈千 俊頼〉 ひくのヽ〈拾 元輔〉 かまど〈拾〉 はなのお〈近 拾〉 まきのお〈山 宇治也 源氏同 詞にまきの山ともいへり〉 まつ〈讃 後拾 定頼 海近 すえの松山おも松やまとは雲り〉 ちりふの〈拾〉 つヽみの こだかみ〈金 顕綱よこのうら風さえ〳〵て〉 いぶき〈美の 通近江さしも草〉 むらくもの〈丹波〉 このはれ〈清輔抄 清少納言〉 いりたちの〈同上〉 わすれずの〈陸 同上 六帖雲あふくま河のあなたにや、人わすれずの山は、さかしきと雲り、〉 かたさり〈同〉 あさくら〈同〉 おほひれ〈同〉 たまさか〈同 摂津国之由清輔抄〉 いつはた〈越前也〉 なかむら〈長和元大嘗〉 たまヽつ〈同〉 いなふさ〈同〉 さヾれいしの〈同〉 とみつき〈同〉 うりふ〈山 こまのわたり也 清輔抄〉 おときくの〈尾〉 はなぞの〈参 はなそめとも〉 しづはた〈駿〉おとづれ〈上総〉 うらみの〈信の〉 しほたれ〈美作〉 わふか〈紀〉 おとなし〈同〉 かたおか〈清輔抄名所といへり 若隻かたおか山歟、可尋亭当〉 たかさごは総て山の名なりともいへり、何不入之、はこやの山は、万葉に有之、寄仙洞詠之、 さがの山は〈行平詠之、山隻天皇御事お山といへり、〉 わしの山は〈霊山也〉 ゆきのみ山は〈雪山也〉 おほうち山〈在名所 寄大内也普通寄禁中源氏雲、〉 大和物語、寛平御座大内山時、兼輔参て詠之隻寄内裏歟、延喜御時、被申叙位間事、於法皇御記曰、延長七年、英明朝臣申、参今御寺、昨日御大内山参入之時、当御湯殿之間祇侯奉仰、仍夜亥二剋雲雲、 しでの山〈冥土〉又もヽへ山なにくれとよめるは、隻やまの重心也、