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万葉集抄

三山者、畝火、香山、耳梨山也、見風土記、〈◯中略〉其由縁は、むかしは山川も夫婦の契おむすびけり、かヽるに、かぐやまは女山也、畝火山と耳梨山とは男山なり、しかるにみヽなしやま、はじめにかぐやまお、けしやうするに、なにとなくうけひくけしきなりけり、そののちに、うねびのやま又かぐ山お、けしやうするに、うねびの山はすがたもおヽしくよかりければ、これに心うりつにけり、おヽしといふは、けだかくよきなり、さてみヽなしやま、さきのやくそくにまかせてあはんとするに、かぐやまうけひかず、うねびの山これお聞て、ともにたヽかふ、これおみつ山のたヽかひと雲也、いまこのみうたに、彼本縁およませ給として、神代よりかヽるにあらし、いにしへも、しかにありこそ、うつせみもつまおあひうつらしきとは令詠給也、