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袖中抄
十四
いもせの山 ながれてはいもせの山の中におつるよし野のかはのよしや世の中 顕昭雲、いもせの山とは、紀伊国にあり、吉野川おへだてヽ、いもの山せの山とて、ふたつの山ある也、昔いもとヽせうとヽ、河おへだてヽ中のさかひお論じけり、遂に妹かちて、せの山の方ちかく堀て、吉野川おばながしたりといへり、彼いもとせうと、この二の山の中に小山あり、それおいもせ山と雲とぞ、彼国の土民申けり、おぼつかなし、