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謡曲
鞍馬天狗 〈して詞〉加様に候者は、鞍馬の奥僧正が谷に住居する客僧にて候、扠も当山におひて、花見の由承及候間、立越よそながら梢おも詠ばやと存候、〈狂言〉是は鞍馬の御寺に仕へ申者にて候、扠も当山におひて毎年花見の御座候、殊に当年は一段と見事にて候、去間東谷へ唯今ふみお持て参候、いかに案内申候、西谷より御使に参りて候、是に文の御座候御覧候へ、〈◯中略〉 〈上歌同〉花さかば告んといひし山里の〳〵、使は来り馬に鞍、くらまのやまの雲珠桜、手折枝折おしるべにて、奥も迷はじ咲つヾく、木陰になみいていざ〳〵花おながめん、