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甲斐国志
三十三山川
巨麻郡西河内領 一白峯(しら子) 此山本州第一の高山にして、西方の鎮たり、国風に所詠の甲斐が根是にして、白根の夕照は八景の一なり、南北へ連なりて三峯あり、其北の方最も高き者お指して、今専ら白峯と称す、中間嶺お隔てヽ、武川筋蘆倉村に属せり、本村より絶頂に至る凡拾里許、正く西に当れり、若し其絶巓に攀登せんと欲する者は、必ず盛暑の時お以て候とす、再宿して応さに還るべし、相伝日神お祀る、〈◯中略〉中峯お間(あひ)の岳、或は中の岳と称す、此峯下に、五月に至りて雪漸く融て、鳥の形おなす所あり、土人見て農候とす、故に農鳥(のうとり)山とも呼ぶ、其南お別当代(じろ)と雲、皆一脈の別峯にして、総て白峯なり、奈良田、湯島諸村の西へ連宣して、信州伊奈郡に界せり、又駿遠の間に出る、大井川も此山の西南より発すと雲、