[p.0767]
世事百談
富士山の高(○○○○○) 駿河の富士山は、三国にまたがりて、吾邦に無比の高山にして、その高さいくばくといふことはかるべからず、塵塚物語に、直に立つれば九十六町ありとひ、月刈藻集に直立して二十五町ともいへり、何れが正しきというおしらず、近きころ享保十二年の夏、福田某といふ人測量せしに駿河の吉原宿より、富士山の頂まで、二百十六町二分一六、〈二十間四方の盤にてこれおはかる、差一寸八分五厘、〉里数にすれば六里◯◯六◯◯六となれり、山の高さは三十五町六分二一六三〈両柱の間一丈一尺にて、高差一尺九寸七分三厘、〉と、ある筆記に見えたり、こは町見の測法なるべければ、正しき積りなるべし、