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大猶院殿御実紀附録

あるとき富岳のいとよく晴渡りたるお見玉ひ、酒井讃岐守忠勝にいかにとのたまふ、忠勝丸く白くいと面白き山なりといふ、松平伊豆守信綱は、三国一の山といひならはせし如く、げにたぐひなき様なりといふ、柳生但馬守宗矩おめしてとはせ玉ふに、宗矩剣法の心もて思ひはかるに、そのおもしろさ、何といふべき詞も侍らずと答奉れば、公さなり、わがおもう所もおなじとのたまひて、えつぼにいらせ玉ひしとぞ、