[p.0784]
日本風俗備考
二十三附録
江都旅程記の二 第二十三日、〈本邦の二月一日〉吉原にて干飯お喫し、原駅に至り、一の豪家に憩ふ、〈◯中略〉此日天気妍晴にて、富士山朗然として其全体お露はせり、殊に其官道は、即ち此大麓にして、地勢坦平、廓落として、美景雲ふ許りなく、我等時々佇立して、覚へず激賞せり、実に其地位と雲ひ、山容と雲ひ、我兼て相像せしよりは、迥に迢絶したり、嗚呼日本人の常に絵画に伝写するも、亦た宜なりと雲ふべし、又此山久く発焔の災なし、故に当時は麓の辺囲に、人家火しく有りて、亦た多く田畝お避けり、此夜沼津に泊る、