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甲斐国志
三十山川
巨摩郡武川筋 一駒が岳 横手、台が原、白須諸村の西に在り、樵蘇する者、山租若干お貢す、山上お甲信の界とす、大武川に沿て、南の方山中に入ること若干里にして、石室二所あり、下お勘五郎の石小屋と呼び、上お一条の石小屋と呼ぶ、此より上は絶壁数拾丈にして攀躋し難く、樵夫猟丁と雖も至らざる所なり、遠く望めば、山頂の巌窟の中に、駒形権現お安置せる所あり、尾白(おじら)川山上より発し、爆布と為り、級お拾ひて懸巌お下り、其下は沈となる、是お千箇沈(せんがふち)と名く、奇勝殊絶なりと雲、又釜無川、大武川も、皆な此山より発源す、